本研究では新たなセンサ材料としてp型半導体である希土類-銅の複合酸化物(Ln_2Cu_2O_5)に着目し、そのNOx検出特性について検討した。まず、p型半導体としてYb_2Cu_2O_5を用いた場合、測定温度550℃ではNOxの内、NOに対しては全く応答せず、NO_2にのみ選択的に応答することがわかった。これまでに報告されているn型半導体を用いたNOxセンサはNO、NO_2の双方に応答しており、本センサはこれまでのNOxセンサにない選択性を有する。90%応答に要する時間は約10分と迅速であった。また、実際の排ガス中の酸素濃度は燃焼状態によって常に変動しており、酸素濃度が変化しても良好に作動することがセンサには要求される。そこでこのセンサの酸素濃度の変化の影響について調べた。その結果、一般の燃焼排ガス中の酸素濃度である5%以上の領域では、酸素濃度変化の影響をほとんど受けず、NO_2を検出できることがわかった。 次にDy_2Cu_2O_5のNOx検出特性を調べたところ、測定温度が300℃のときNOに対する感度が最大になった。応答に要する時間はNO、NO_2で大きく異なり、NOに対する応答時間は8分程度であるのに対し、NO_2には緩慢に変化した。次に酸素濃度依存性であるが、Yb_2Cu_2O_5と同様、酸素が5%以上存在するときセンサの比抵抗の値は酸素濃度によってもほとんど変動せず、NO濃度の増加とともにセンサ素子の比抵抗は変化し、酸素濃度が常時変化する環境下においても精度良く検出できることがわかった。 以上のように、Yb_2Cu_2O_5を素子として用いたセンサは測定温度550℃においてNOxの中でもNO_2のみを選択的に検知できることがわかった。このセンサは測定雰囲気中に酸素が5%以上存在すれば酸素濃度変化の影響をほとんど受けず、酸素濃度が常時変動している実際の排ガス中においてもNO_2の検出が可能であることがわかった。 一方、Dy_2Cu_2O_5を素子として用いたセンサは300℃においてNOに対して高い感度を示し、90%応答に要する時間も8分程度であった。この温度ではNO_2に対してもゆっくりとした対応を示すが、NO_2をコンバータ-でNOに変換すれば全NOxの測定が可能になる。 つまり、これら2種類のセンサを組み合わせれば、Yb_2Cu_2O_5でNO_2を計測し、Dy_2Cu_2O_5で全NOx量を計測することによって正確に個々のNO、NO_2の排出量を求めることができる。
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