研究概要 |
ハンタウイルスは腎症候性出血熱の原因ウイルスで、ブニヤウイルス科に属するRNAウイルスである。この研究ではハンタウイルス核蛋白の誘導する液性抗体の感染防御について明らかにすることを目標として感染防御に有効なエピトープ領域の決定を行なった。 1次構造上の抗原領域の決定; 大腸菌を使ってハンタウイルスHantaan 76-118株の核蛋白の様々な部分を組換え蛋白として発現させ、単クローン抗体との反応性を調べ、単クローン抗体の認識部位を明らかにした。リニアエピトープを認識する単クローン抗体E5/G6についてはcDNAから予想されるアミノ酸配列を元にペプチドを合成し反応性を確認し、エピトープの特定を行なったところ,アミノ酸166-175の配列,EDVNGIRKPKであることが明らかとなった。 またこの実験に付随して,ハンタウイルスの核蛋白のアミノ酸1から103がimunodominant領域であることが分かった.すなわち,人及び動物がハンタウイルスに感染したとき,核蛋白に対する抗体が強く誘導されるが,そのほとんどのリニアエピトープはこの領域に集まっていることが明らかとなり,診断抗原として有用な領域であることが分かった。また、立体構造依存性のエピトープについては,バキュロウイルスでの同様の実験から,この1-103の領域と200-300の領域にもにも存在することが示唆された。 スクレープロ-ディング法及びマウスでの感染防御活性を持つ単クローン抗体E5/G6の認識するエピトープは,アミノ酸166-175の感染によってほとんど抗体の誘導されない領域であることが明らかとなった.今後,この領域に対する抗体を効率よく誘導する免疫方法を検討することが必要であると考えられる.
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