日光に含まれる紫外線は、露光部皮膚に発生する皮膚腫瘍(日光角化症、有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫など)の発生原因として、最も重要である。上記の皮膚腫瘍が多発する高齢者の皮膚の紫外線の変異原性に対する感受性を調べ、更に紫外線の変異作用を抑制できる薬剤の検定システムの作成を目的とした。 5例の顔の日光角化症の手術材料より繊維芽細胞を採取し、培養を行った。表皮角化細胞のfeeder layerや器官培養法、無血清培地などの培養を試みたが十分な細胞数を確保、維持できなかった。線維芽細胞は紫外線B、紫外線Cを照射し、致死率を求めたが、同年令の顔の母斑細胞母斑の手術材料の線維芽細胞と明らかな差を認めなかった。人線維芽細胞を安定して培養することが難しく、今年度は、HSV-TK遺伝子の導入を試みることができなかったが、今後、培養条件を検討し、HSV-TK遺伝子を導入し、紫外線による遺伝子変異誘導率の検討を行う予定である。 遺伝子変異抑制作用物質の検討については、すでにラット線維芽細胞株にHSV-TK遺伝子を導入して樹立したLTK-15/CREF細胞を使用した。変異原として、50J/m^2の紫外線B単独照射と5μMの8-METHOXYPSORALEN(Sigma;M3501)で1時間インキュベート後3kJ/m^2の紫外線A照射を行った。変異抑制物質として1μMのall trans-Retinoic Acid(Sigma;R2625)を紫外線照射3日前より照射後1週間まで投与した。その後アシクロヴィルとG418でセレクションを行い、変異細胞のコロニー数をカウントしたところ、UVB単独の時も8MOP+UVAの時もレチノイン酸による変異抑制効果が観察された。今後、人細胞での実験、変異の遺伝子変化の同定、他の変異抑制物質の検討を行う予定である。
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