研究概要 |
私は,ガングリオシドを特異的に認識するタンパク質を探索する戦略として,ガングリオシド結合性ペプチドの同定を目指している.本研究は,ランダムペプチドライブラリーを利用した特定ガングリオシド結合性ペプチドのスクリーニング法の可否を証明することを第一の目標とし,ガンの転移に深く関わっていることが示唆されているガングリオシドGD1aに焦点を絞り,GD1a結合性ペプチドの同定を行った. ガングリオシドGD1aをオクチルセファロースに吸着させ,GD1aアフィニティーカラムを作製した.このカラムにランダムペプチドライブラリー(様々な15アミノ酸配列をファージ上に発現させたもの)を添加し,結合したファージをGD1aで選択的に回収した.回収したファージを大腸菌へ感染させ増幅し,再度アフィニティーカラムで選択する操作を4回繰り返すことで,GD1aと結合するファージ群の濃縮に成功した. GD1a結合性ファージをクローン化して結合特異性を確認したところ,酸性リン脂質とは結合せず,GD3結合性及び非結合性のクローンが存在した.これらのファージからDNAを単離し,塩基配列を決定した結果,GD1a結合性ファージは,主に3種のファージクローンから由来していることが明かとなった.これらのファージが発現するペプチドは,疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基(主に塩基性)が混在する特徴的な配列をしていた.現在,これらのペプチドを化学合成し,サイズ排除クロマトグラフィーによるガングリオシドとの結合解析を進めている. 本研究によって,ランダムペプチドライブラリーがガングリオシド結合性ペプチドの探索において,極めて有効な手法であることが確認された.一方,本研究手法の限界を克服する新しい手法へと発展させる手掛かりも得られ,これを踏まえた予備実験において良好な結果が得られており,次年度の課題となった.
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