本年度の研究実績は以下の通りである。(1)前年度に続き、日本の公私図書館に於いて博物学漢籍の調査を行ったが、関連資料の捜索範囲を拡大し、漢籍のみならず古類書や古辭書、陰陽道や密教文献など各種の日本撰述漢文文献もターゲットとした。重点的な調査対象としたのは宮内庁書陵部、国立公文書館、金沢文庫、大阪の杏雨書屋などである。(2)文献に加えて実物や遺跡など考古資料を調査した。そのため横浜ユーラシア文化館、高野山三宝院、奈良国立博物館、京都国立博物館、東京国立博物館、Miho Museum、神戸市立博物館、ニューヨークのメトロポリタン博物館等々で、各種の特別展を参観することで、文献を実物で証明し得る貴重な文物を観察できたことで、本課題の研究上に新たな認識をもたらすことができた。(3)書陵部所蔵の宋版《初學記》、宋版《太平御覧》、耶律楚材《西遊録》抄本、《新雕陰陽百忌暦》、《玉燭寶典》;金沢文庫所蔵の《ト筮書》、《弘決外典抄》、《産生類聚抄》、《集七十二家相書》、《廿八宿井五行法》、《星供圖》、《諸尊別行略抄》、《加持温病法》;お茶の水図書館及び天理図書館所蔵の《秘府略》;杏雨書屋の《寶要抄》、《香要抄》、《穀類抄》等を調査し、その中の重要なものについてはテキストの校勘と整理を行うと共に、内容について考察を加えた。(4)杏雨書屋蔵《寶要抄》をはじめとする幾つかの材料に關しては、論文を執筆し、その一部を公刊した。(5)アメリカのジョンズ・ホプキンス大學で開催された第12届東亞科學史國際學術研討會で論文を発表したほか、日本国内の幾つかの学術シンポジウムに出席し、討論に参加した。
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