本年度は、玉川とRasmussenの共同研究により、研究実施計画記載のような代数曲線の被覆の数論幾何に関して、研究の目的を十分果たすことができた。より具体的には、次のような重要な成果を得た。 1.有理数体Q上のg次元アーベル多様体Aの同型類と素数1の組で、Aの全ての1冪等分点を添加して得られる体が1の外で不分岐で1次円分体上副1な拡大になるようなものは有限個しかないことを予想しg=1の場合に証明していたが、本年度はこの結果に関する論文を完成、学術雑誌Mathemaical Research Lettersに投稿、査読後掲載が決定された(巻、発行年等は未定。) 2.上記の予想を、gが3以下の場合に証明した。 3.上記の予想を、一般リーマン予想の仮定の下でgが一般の場合に証明した。 この他、玉川は、Cadoret氏との共同研究により、有理数体上有限生成な体上の曲線の上のアーベルスキームに対し、そのファイバーに現れるアーベル多様体の有理的なp冪ねじれ点の位数に対する上界の存在を証明、系としてFriedのモジュラータワー予想の1次元の場合を証明した。また、玉川は、Saidi氏との共同研究により、有限体上の曲線やその関数体の遠アーベル幾何に関して、素数の無限集合Σである条件を満たすものに対し、幾何的基本群を最大副Σ商に置き換えた場合のIsom版を証明できた。 なお、玉川とRasmussenは、9月に韓国KIASを訪問、研究集会、「Asian Conference on Arithmetic Geometry」に参加し、成果発表とともに、他の参加者との意義ある研究交流、情報交換ができた。また、Rasmussenは、本補助金を利用して3月に米国Arizona大を訪問、研究集会「Arizona Winter School 2009」に参加し、他の参加者との意義ある研究交流、情報交換ができた。
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