研究概要 |
Diels-Alder反応は有機合成の中でも重要な炭素骨格形成反応の一つである。これまで不斉触媒Diels-Alder反応に関しては、キラルなルイス酸触媒を用いる反応の開発が、研究の中心であった。これに対し、2000年、MacMillanはキラルな2級アミンを触媒とする不斉Diels-Alder反応を報告した。これはアミンとα,β-不飽和アルデヒドから、キラルなイミニウム塩が生成し、反応が進行するものである。一方、我々はdiarylprolinol silyl etherが高い不斉識別能を有するアミン触媒であることを見出しており、既にそのCF_3CO_2H塩がトルエン中での不斉Diels-Alder反応の触媒として作用することを明らかにしている。今回、環境調和型反応の開発を目指し、有機溶媒を用いない、水を反応媒体とする不斉触媒Diels-Alder反応を検討した。種々触媒と添加剤等の検討を行った結果、diarylprolinol silyl etherの過塩素酸塩を用いると、水存在下でも反応が進行し、非常に高い不斉収率で目的とするDiels-Alder体が得られることを見出した。種々の基質で反応を検討したところ、反応には一般性があることがわかった。また、基質によっては反応終了後、水と有機物を分離後、直接蒸留を行い精製することができることから、反応のみならず、精製段階を含めて、有機溶媒を全く用いない、環境調和型の不斉触媒Diels-Alder反応を確立することができた。
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