経済の発展に伴い、先進国のみならず開発途上国においても良好な環境の保全、悪化した環境の修復が必要となっている。特に湖沼や河川等に含まれるダイオキシン類や環境ホルモンに代表される低濃度有機化合物は、生態系に大きな影響を与えるため、大量処理できる浄化技術が求められている。本研究では、水溶液中の触媒表面においてオゾンから発生するOラジカルが酸化力の強いOHラジカルに変換する特異の反応を積極的に活用し、難分解性物質の分解に関する研究を行った。 本年度は、製紙排水に含まれる難分解性有機物である腐植物質(フルボ酸様物質)について着目し、オゾン分解の実験を行った。インピンジャーを用いた反応実験では、3分で約90%が分解され、オゾンとの反応の選択性が高いことが明らかになった。さらに、オゾン加圧溶解実験においても、オゾンと処理水とは並流接触させているため、単位液量あたりのオゾン消費量が2.8mg-オゾン/L-処理水と少ないものの、腐食物質については相対蛍光強度が急激に減少し、4サイクル後に約30%まで低下した。このことから、オゾンが選択的に腐食物質を分解しており、発ガン性物質『トリハロメタン』を形成する前駆物質であるフルボ酸に効果的であることが明らかにした。また、本製紙排水に対しては、塩基性活性炭の中でも強塩基で細孔容積の多い活性炭(GB)の吸着能が高いことが明らかになった。また、染料(オレンジII)の分解においては、発色団の脱色反応自体は常圧オゾンの方が加圧溶解させたオゾンよりオゾン消費量が少なくなったが、脱色後のベンゼン環などの二重結合の開裂に伴う易微生物分解生成物(BOD成分)への変換においては、加圧オゾン方式の方が効率的に分解・処理できることを明らかにした。
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