研究概要 |
Si基板上に自己形成されたGeアイランドは,これを保護するSi層でキャッピングされることで,そのサイズ,形状,化学組成が劇的に変わる.申請者らは最近,このSiキャップ層の形成温度をある範囲に設定することで,半球状のGeアイランドの周辺にリング状の「つば」が付随した「ナノハット」が形成されることを見出した.さらにこのナノハットを選択化学エッチングすると,周辺の「つば」だけが残ってナノリングとなる.本研究では,これらナノハットおよびナノリングの発現メカニズムを解明し,そのサイズと密度を制御するプロセスを構築するとともに,これらナノ構造の量子物性の探索と応用展開の指針を得ることを目的として研究を行った。本研究ではSiリッチなナノリングを自己組織的に形成する技術を開発した。すなわち、GeアイランドをSi層でキャッピングした後、Geを選択化学エッチングすることによってナノリングが得られる。エッチング後にナノリングが形成するのは、Siキャッピング中に飛来するSi原子が各アイランドの底辺領域に選択吸着し、かつ、Geアイランドの頂点付近で生じるSi/Ge相互拡散によって原子が頂点からアイランド周辺へ泳動するためであると理解される。Siキャップ層形成過程においてはGeアイランドの形状,サイズが大きく変化を受け,そのことが,これらナノ構造の電子的・光学的特性を大きく左右することが懸念される。ナノ構造の電気的及び光学的特性は、サイズのみならず形状に大きく影響されるためSiキャップ時におけるGeアイランドの形状変化の機構解明とその制御は,表面科学的に興味深いだけでなく,工業的にも今後きわめて重要である.本研究で見出されたナノリングの電子状態の制御や荷電ナノリングからの発光特性の制御といった新奇物性の探索が今後期待される。
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