本研究の目的は、ゲルマニウム(Ge)ドット多層膜形成過程を明らかにし、同多層膜をp-i-n接合のi層に用いた高効率太陽電池を作製するために必要な知見を得ることである。ドットサイズと密度の制御はSiGe混晶薄膜バッファ層を最適化することにより行なう。 本年度は所望のドット形状と密度を作製するために、ドット成長パラメータの最適化を行なった。その結果、Ge被覆率と成長温度が、太陽電池作製に用いるアイランド特性を決定する主たる二要因であることを明らかにした。まず温度依存性では、高温成長は低温成長よりGeアイランドが大きいことを明らかにした。被覆率依存性では、低Ge被覆率ではアイランド密度が低く、太陽光スペクトルのうち近赤外領域近傍の光吸収が低下すること、一方、高被覆率ではアイランドサイズが増大し、転位が発生することを明らかにした。大きなアイランド中に存在する転位は太陽電池としての性能を劣化させるから、転位なしのアイランドを高密度配置させることが、太陽電池としての性能を向上させる上で最も重要である。この意味で、成長温度の精密制御がきわめて重要である。高温成長ではSiとGeの相互拡散を増大させることが明らかになった。この相互拡散はバンドギャップを変調させ、その結果、近赤外領域の光吸収特性に影響する。成長パラメータを精密制御し、SiとGeの相互拡散を低減しGeアイランド密度を高密度化することが太陽電池の作製にとって重要である。
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