研究の目的は、ゲルマニウム(Ge)ドット多層膜形成過程を明らかにし、同多層膜をp-i-n接合のi層に用いた高効率太陽電池を作製するために必要な知見を得ることである。昨年度は、所望のドット形状と密度を作製するために、ドット成長パラメータの最適化を行った。一方、こうして形成されたGeドットをSi層で挟みつつ、多層化することにより、太陽光の吸収効率を飛躍的に増大させることができる。ところが初年度に明らかにしたように、このように自己組織的に形成されたGeドットをキャッピングすると、そのサイズ、形状、化学組成が劇的に変化する。本年度は、このGeドット形状が大きく変化する現象(ナノリング、ナノハット形成)に関し、その形成過程を光電子顕微鏡を用いて詳細に調べた。その結果、シリコン極薄層でキャップしたGeドット表面は、形成条件によりナノハット、ナノドット、ナノピラミッドという三種類の形状を取ること、それらはGeドットにSiが混入して形成されるSiGe混晶のSi/Ge組成比に由来するものであることを明らかにした。こうした形状は、電子の閉じ込め効果にきわめて大きな影響を持つため、太陽電池の作製においてその制御が重要である。
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