研究概要 |
当研究室においてこれまで行われた計測において、合成した垂直配向単層カーボンナノチューブ(VASWNT)膜中の単層カーボンナノチューブ(SWNT)の束は、比較的少数のSWNTにより構成されていること可能性が示されている.これは、VASWNT膜を構成する個々のSWNTが電気的及び熱的に比較的独立している可能性を示唆している.従って、個々のSWNTの優れた物性を保った異方性の強いバルク材料として、VASWNTの様々な応用が考えられる. これらのVASWNTの内部構造の詳細を明らかにするため、マイクロ・グリッド上に転写したVASWNT膜を、透過型電子顕微鏡を用いて観察した.この観察により、VASWNT膜内の束は凡そ6本のSWNTにより構成されていることが分かった.熱重量分析(Thermogravitaional analysis,TGA),又は我々が開発したThermo-optical analysis(TOA)の測定を行い、VASWNT膜の燃焼温度が膜の密度とともに増加することを明らかにした. また、独国ドレスデン工科大学のグループとの共同研究として、X線吸収測定を行い、VASWNT膜内のSWNTの配向度を見積もった垂直配向SWNTは基板に対して90±25度の方向になり、以前の偏光光吸収測定と一致した. さらに、偏光ラマン分光測定によって、VASWNT膜の電子・光学的物性を検証した.入射光の偏光依存性を調べた結果、SWNTの1次的な構造に由来する、偏光方向に依存した特異な励起特性が観察された.
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