本年度は、キレート剤を用いた超臨界二酸化炭素抽出法により、使用済み自動車触媒からの貴金属(パラジラム、白金、ロジウム)抽出について基礎的な検討を行った。はじめに、キレート剤の選定、抽出時間・温度・圧力、キレート剤量等が、貴金属の抽出率に与える影響について検討を行った。ここでの貴金属の抽出率は、誘導結合プラズマ(ICP)分析により測定した金属の濃度に基づき算出した。 実験に用いたキレート剤の中では、TBP-HNO_3がパラジウムの選択的な抽出に効果的であることが確認できた。パラジウムは、硝酸でイオン化されたのちにTBPの配位により、超臨界二酸化炭素に溶解できる錯体が形成されるため、抽出されたと推測される。一方、白金は、硝酸によるイオン化は不可能であるため、また、ロジウムは、硝酸によるイオン化は可能であるものの、TBPの配位ができなかったため、抽出ができなかったと考えられる。このように抽出メカニズムを把握し、キレート剤および酸溶媒を各貴金属の特性に合わせて設計することにより、一種の貴金属のみを選択的に抽出できるプロセスを構築できる可能性を示した。 TBP-HNO_3を用いてパラジウムが効率よく抽出できる実験条件の検討を行った。キレート剤添加量(2-12ml/mg-Pd)の検討では、今回検討した条件の中で10ml/mg-Pdが最も効率良く抽出できることが明らかとなった。抽出温度(40-70℃)の検討では60℃が、抽出圧力(10-30MPa)では20MPaが高効率に抽出できることが明らかとなった。静的抽出時間の検討では、60分でおおよそ抽出率が最大となっていた。これらの検討の結果に基づき、TBP-HNO_3が10ml/mg-Pd、温度60℃、圧力20MPa、静的抽出時間60分の条件で抽出を行ったところ、90%以上のパラジウムを抽出可能であることが明らかとなった。
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