研究概要 |
アジア途上国における電子・電気機器廃棄物(e-waste)のリサイクル活動に由来する環境汚染やヒトへの有害物質曝露の実態を解明するため、インド・バンガロールおよびチェンナイの電子・電気機器廃棄物(e-waste)の処理場から採取した土壌・大気およびe-waste処理作業従事者の毛髪試料を対象に各種残留性有害物質の測定を実施した。まず昨年度臭素系難燃剤(PBDEs・HBCDs)を測定した土壌試料の一部について、塩素化ダイオキシン類(PCDD/DFs,Coplanar-PCBs)、臭素化ダイオキシン類(PBDD/DFs)、臭素・塩素化ダイオキシン類(PBCDD/DFs)等のダイオキシン類縁化合物を測定した。その結果、ダイオキシン類縁化合物の濃度が最も高かったのは、バンガロール・スラム街のe-waste処理地域の土壌であった。また、e-waste処理地域の土壌では都市域や森林地域の土壌とは異なり、PCDD/DFsよりPBDD/DFsが高濃度で残留していた。加えて、土壌中ダイオキシン類縁化合物の総TEQを算出した揚合、e-waste処理地域では、PCDD/DFs以外にもPBDD/DFsのTEQ寄与率が顕著であった。以上の結果から、e-wasteの不適正処理はPBDD/DFs含むダイオキシン類縁化合物の環境負荷を増大させることが示唆された。さらにパッシブエアサンプラーで採取した大気中臭素系難燃剤の濃度について測定した結果、土壌と同様にe-waste処理地域で明らかに高い傾向が認められた。加えて、一部のe-waste処理作業従事者の毛髪から高濃度の臭素系難燃剤やPCBsが検出され、これら物質のヒトへの曝露が明らかとなった。本研究は、インドのe-wasteリサイクル処理活動に伴う臭素系難燃剤・ダイオキシン類縁化合物の環境汚染やヒトへの曝露を評価した世界初の調査研究例と思われる。
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