現在、南アジア諸国(バングラデシュ、インド、スリランカ)では、焼畑農業に基づく自給的農業から、小規模なゴム農園に基づく商業的農業への転換が進行している。それは、ゴム農園(アグロフォレストリーの形態を取ることが多い)が、焼畑農業に代わりうる持続可能な土地利用システムとして、および地域住民の収入源として、期待されているからである。 本研究では、ナス(Nath)氏が博士論文研究で培った分析視角(=持続可能な生計フレームワーク)、特に「生計のための5つの資本」概念を用いて、南インド(バングラデシュ、インド、スリランカ)を訪れ、ゴム・アグロフォレストリーの持続可能性と人々の生計を比較評価するためのフィールド調査を実施した。スリランカのデータは未整理なので、主にバングラデシュとインドの比較研究で明らかになった事項を報告する。 1)両国ともゴム農園は、1-4年の初期段階では、バナナやパイナップルと混植されており、収入も向上していた。 2)ha当たりゴムノキ本数は、インドが440本、バングラデシュが170本であった。これは、農民へのサポート体制や訓練プログラムの充実度合いの差による。 3)ゴム農園はその後、モノカルチャーになるので、ゴムの国際価格の変動や自然条件の悪化などによるリスクを負うことになる。そこで、果樹、薬用植物、木材などと混植することを通して、地域の生物多様性の向上とともに、農民にとっての短期・長期にわたる収入源の確保につなげることを提案する。
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