高品質で鮮度の高い農産物・食品に対する消費ニーズの高まりに対し、流通過程の鮮度や品質は熟練者の目に頼っているのが実情であり、近年の担い手の減少や熟練作業者の高齢化により、自動化する以外に鮮度や品質管理が保証されにくい状況にある。 そこで、収穫後の農産物の生理活性に密接に関係するATPを、分光分析により非破壊で検出する技術について検討し、ATP含量が農産物の鮮度評価を行う指標になりうることを示した。 市販のATP標準液では260nmにATPの特異的な吸収波長が認められ、文献値と一致した。これが、ホウレンソウのプロトプラスト懸濁液では、この吸収波長が280nmにシフトすることが明らかになった。さらにプロトプラストのATP含量については、298nmの透過率を用いて、透過率とATP含量との間に相関係数が約1となるATP推定モデルが得られた。一方、ホウレンソウ葉の拡散反射率を用いると、プロトプラスト懸濁液と同じ298nmにおいて、葉内のATP含量を推定でき、このモデルの相関係数は、約0.9であった。 以上の結果、農産物(ホウレンソウ)のATP含量を非破壊で検出して鮮度の指標とする基本的方法を明らかにし、「鮮度測定方法および鮮度測定装置」として特許を出願した(特願2008-103927)。
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