胆汁酸による核内受容体の転写活性化に伴う構造変化解析を、蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)を利用して行うための実験系の構築を行った。 1.胆汁酸応答性核内受容体の一つであるビタミンD受容体VDRと、VDRとヘテロダイマーを形成する核内受容体、レチノイドX受容体(RXR)の蛍光標識体を作製し、蛍光スペクトル及びルシフェラーゼレポーターアッセイによる転写誘導活性をリガンドの非存在化及び存在化で評価した。ますFRETシグナルの検出効率の最適な蛍光体の組み合わせを検討するため、4種類の蛍光蛋白質ECFP、EYFP、Cyan及びYellowの遺伝子を含む発現ベクターへ全長のVDRとRXRaをそれぞれ挿入して、それらの受容体の融合蛍光体を作製した。作製した蛍光VDRと蛍光RXRaを単独もしくは共にHEK293細胞にトランスフェンションし、活性型ビタミンD3添加による蛍光スペクトルの変化(2分子FRET)を観察した。その結果、CyanとEYFPの組み合わせが、FRET検出効率が最も良好であることが明らかになった。Cyan-VDR/EYFP-RXRa及びCyan-RXRa/EYFP-VDRを用いて、蛍光VDR及び蛍光RXRaの細胞内での局在、蛍光顕微鏡下での生細胞内VDR/RXRa相互作用のFRETの解析の予備検討を行っている。 2.核内受容体の標的遺伝子の転写調節に重要な役割をするとされるコファクターの蛍光体の作製、また両側に異なる蛍光体を有するCyan-hVDR-EYFP及びECFP-hVDR-EYFP(1分子FRET)の構築も行っている。 3.VDRのリガント結合領域の一点変異体の作製し、2分子FRET及び1分子FRETにより、リガンド依存性立体構造変化及びコファクター複合体の解析の準備を行っている。
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