潰瘍性大腸炎患者では、持続する炎症の結果、大腸がんの発生頻度が正常人に比べて高い。慢性炎症を基盤とする、このようながん化過程における、炎症性サイトカイン・ケモカインの役割を解明することを目的に、Azoxymethaneをマウスの腹腔内に投与5日後から、デキストラン硫酸塩(DSS)を飲料水に加えて5日間飲用させることを3回間欺的に反復させる、大腸がんモデルを検討した。昨年度に、腫瘍壊死因子が発症過程のみならず進展過程に密接に関与していることを報告した。さらに、腫瘍壊死因子の作用を抑制すると、大腸病変部でのCCL2の発現が減弱していたことから、CCL2に対するレセプターCCR2を欠損しているマウスでの大腸がん発症過程を検討した。CCR2欠損マウスでは、サイクロオキグナーゼ(COX)-2を発現しているマクロファージの浸潤が減弱し、AOM/DSSによる大腸がん発症が軽減した。さらに、腫瘍が多発した段階でCCL2に対する阻害剤を投与すると、COX-2発現細胞の浸潤が軽減されるとともに、腫瘍血管形成が抑制されるとともに、腫瘍の数・大きさが軽減した。これらの結果は、CCL2-CCR2系が、COX-2発現細胞の浸潤を制御することによって、大腸がんの発症のみならず進展過程にも深く関与していることを示唆していると考えられた。
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