研究概要 |
SAP-1は、ヒトの胃がん細胞株より同定された受容体型チロシンホスファターゼであり、これまで大腸がんや肝臓がんの分化度と相関するとの報告や、培養細胞を用いた検討では過剰発現により細胞増殖を抑制すること、アポトーシスを誘導することなどの報告があるが、生体内での生理的、病態的意義は明らかではない。 私共は、ヒトSAP-1塩基配列をもとにしてマウスのSAP-1ホモログを同定した。Northern blotting,western blottingにより、SAP-1は、マウスにおいては消化管に高度に発現することを明らかにした。さらに、蛍光顕微鏡および電子顕微鏡を用いた解析により、SAP-1は特に腸上皮細胞の微絨毛に局在を示すことを明らかにした。ヒト腸上皮細胞でも同様に管腔面に局在を認めた。また、マウスにおいて、SAP-1は胎児期後期より発現を認めるが、生後、発達とともに発現量の増加を認めた。 さらにSAP-1の消化管における生理的、病態的意義を検討する目的で、SAP-1ノックアウトマウスを作製し解析を行った。SAP-1ノックアウトマウスの小腸の構造は、光学および電子顕微鏡を用いた検討では、野生型マウスと大きな違いは見いだせなかった。しかし、腸管腫瘍自然発症モデルであるApc minマウスとの交配により、SAP-1の欠損が、大型腫瘍の発生数を抑制することを見いだした。その分子機序に関して現在検索を進めている。
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