石灰化過程と地球環境変動に対する応答について解明するために以下の課題を追求した。 1.野外調査 1)サンゴ礁の現場における炭酸システムの観測と群集代謝量(光合成・石灰化)の解析をおこなった。 2)ソフトコーラルを採取し骨片を採取した。 3)ソフトコーラル骨片の結晶形態・鉱物組成・化学組成の多様性と規則性について解明した。 4)骨片中の有機気質のタンパク質分析とアミノ酸シーケンスの解明 2.炭酸塩骨格に含有する有機基質の蛋白質・アミノ酸組成を測定し、生育環境との関係を追究した。 2種類のソフトコーラルについて、骨片に含まれる有機基質中のタンパク質を分離したところ、11種類の新規タンパク質を同定した。その内の2種類のタンパク質ついについては、炭酸脱水酵素活性をもち、かつカルシウム結合性の特性をもつ極めて特異なタンパク質であり、海洋生物の骨格形成に重要な働きをもつものと推察された。ソフトコーラルの骨片から基質タンパク質を分離できたのは、世界で我々のグループが最初であるので、タンパク質分離方法と新規酵素タンパク質について特許申請した。地球環境変動に対する海洋生物の応答について、基質タンパク質の特性の面からの追究が可能であることが考察された。 3.得られた研究成果について、国際サンゴ礁学会(5月、マイアミ)、日本地球化学会年会(9月)、日本サンゴ礁学会(11月)にて発表したところ海外からの反響が大きく、共同研究に発展した。
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