本研究では、蛍光物質を内包した自己集合性中空錯体を新規に構築し、その構造と物性の機能の相関を原子レベルで明らかにすることで、新たな機能性材料の開発を目指した。有機配位子と金属イオンの自己組織化により構築される、ナノメートルサイズのかご状錯体の孤立空間内に閉じこめられた蛍光性有機分子は、通常の溶液中や固体状態では見られない挙動を示すと考えられる。 蛍光性ゲスト分子として、フルオロセイン誘導体、ビスアントラセンを用いた。両者の蛍光性分子は、M_6L_4かご状錯体内に1分子包接されることがNMRの積分比より分かった。ビスアントラセンは、M_6L_4かご状錯体内に包接された分子の中で最大の大きさを有する。錯体内に包接されたビスアントラセンの構造は、X線結晶構造解析により詳細な解析を行った。アントラセン部位は、かご状錯体の表面に形成される窓を埋めるようにして配置していた。アントラセン平面どうしのねじれ角は溶液中と同様に直交していた。さらに、アントラセン部位とかご状錯体上の金属イオンとの距離が短く、相互作用が働いていることが分かった。包接された分子からの蛍光強度はかご状錯体により、効果的に弱められた。
|