研究課題/領域番号 |
07F07372
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樽茶 清悟 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
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研究分担者 |
CRACIUN Monica Felicia 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | グラフェン / 2層グラフェン / 3層グラフェン / ディラク粒子 / 電気伝導実験 / バンド構造制御 |
研究概要 |
本年度は、世界中で行われているグラフェン研究の急速な発展状況を踏まえて当初の予定をやや変更し、(1)2層または3層グラフェンにおけるバンド構造の電気的制御、(2)基板からサスペンドされたグラフェンの作成、の2点に焦点を絞って研究を進めた。 (1)に関しては、バックゲートに加えてトップゲートを取り付けることによってグラフェンシートに垂直な電場を印加し、電気伝導を測定することによってバンド構造を調べた。単層グラフェンがゼロギャップ半導体であるのに対し、2層グラフェンでは電場によってバンドギャップが生じることを確認した。さらに面内磁場の印加によってそのバンドギャップが小さくなることを利用してバンドギャップの大きさを見積もる実験を現在進めているところである。また、3層グラフェンでは、逆に電場によってバンドの重なりが大きくなり、抵抗が減少することを見いだした。更に、低温(50mK)におけるキャリア密度と状態密度から具体的なバンドギャップの大きさを見積もり、キャリア密度の温度変化から見積もられる値と一致することを確認した。この実験では、これらに加えて有効質量、散乱時間といった全てのパラメータを実験的に得ることに成功した。また、2層や3層グラフェンでは、層数の増加に伴って移動度が減少することから、層間散乱が主な散乱要因であることを突き止めた。 (2)に関しては、サスペンドされたグラフェンの作成が報告されたことから、同様な方法によって試料の作成を試みているところである。サスペンドされたグラフェンでは、基板のSiO2表面からの散乱の影響がなくなり、移動度が飛躍的に改善されることが知られている。このような試料の作成により、基板による散乱の影響を受けずに電気伝導を測り、応用へと繋げることも可能になると考えている。
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