研究概要 |
LB法は水面上に形成された高配向な両親媒性単分子を固体基板上に累積する方法として用いられている。このような単分子膜は、工学的な観点からだけでなく、擬似生体膜のモデル系としても興味をもたれているが、重要な役割を果たすとされる構造的な理解、即ち分子配向やドメイン形成に関する理解はまだ完全とは言えない。本研究の目的は、我々のグループが進めているMDC,SHGおよびBAMの同時測定、およびその理論的解釈から、低次元系の物性を示す系として興味が持たれているラングミア膜(単分子膜)の動的挙動を理解し、その工学的応用を模索することにある。本年度は、はじめにキラル棒状分子(DPPC)からなる単分子膜(キラル膜とラセミ混合膜)における配向構造とドメイン形状をMDCおよびBAMを用いて観測した。その上で、キラル膜とラセミ混合膜で観測されるMDCの違いについてπ-A曲線の熱力学的な解析から考察および検討を行い、電気双極子(ないしは電気四重極子)相互作用がMDCの違いに重要な役割を果たすことを明らかにした。また、Siナノ粒子が電子素子の誘電特性に及ぼす影響を、有機物を用いたトランジスタおよびMIM構造素子による測定から検討した。結果、Siナノ粒子に電荷が強くトラップされ、素子内に極めて少量の粒子を分散させるだけで、素子特性が大きく変調されることを見いだした。
|