研究課題/領域番号 |
07F07419
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
重本 隆一 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授
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研究分担者 |
DONG Y.-L 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 外国人特別研究員
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キーワード | 神経因性疼痛 / グルタミン酸受容体 / シナプス / 扁桃核 / 情動 / 傍小脳脚核 / 記憶 |
研究概要 |
扁桃体が司る恐怖や不安といった感情に最も直接的に作用する感覚は、痛覚である。痛覚が惹起する不快な情動記憶は、末梢神経の機能障害が原因である神経因性疼痛を増強するものであり、人間の患者の場合にも臨床的に問題となる。しかし、痛覚がどのように扁桃体で情動記憶として蓄えられ、それがどのように神経因性疼痛に影響をおよぼしているのかについては、研究が進んでいない。本研究では、ラットの第5腰椎神経を結紮することによって神経因性疼痛を引き起こし、扁桃体の中心核外側部のシナプス変化を観察した。視床や大脳皮質を経由する痛覚情報が基底外側核から中心核外側部に投射するシナプスおよび脳幹の外側結合腕傍核から直接、中心核外側部に投射するシナプスの両方で、シナプス面積の増大とAMPA受容体密度の上昇が起こっていることを見出した。また、基底外側核から中心核外側部に投射するシナプスは主に神経細胞の棘突起上に形成されているのに対し、外側結合腕傍核から中心核外側部に投射するシナプスは主に樹状突起上に形成されていることが分かった。また外側結合腕傍核からの投射はより近位にシナプスを形成していた。外側結合腕傍核からのシナプスの変化は、痛覚が消失した後も持続する。このような形態観察とは別に行動実験を行い、これらのラットでは不安行動が亢進していることを見出した。現在、シナプスの形態変化が神経因性疼痛が引き起こす不安行動にどのように影響するのか、これらの情動記憶を抑制する薬物の効果はどうか、などを検証中である。
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