研究概要 |
(1)2種のコオロギ、Dianemobius nigrofasciatua,およびAllonemobius allardiの脳-中枢神経系に発現するセロトニンおよび2種のセロトニン受容体(5HTR-A,5HTR-B)様免疫組織化学的反応を調査した。セロトニン様組織化学反応は、両種とも中心体、視葉のaccessory medulla領域、前額神経球(FG)、前大脳の脊側方(DL)、前大脳後方外側、食道下神経節(SOG)に見られた。セロトニン受容体の方はこれとはかなり異なる部位に発現していた。5HTR-Aは脳間部(PI)に強く発現し、DLと視葉(OL)特に付け根部分、SOGの中心線上に発現していた。5HTR-BはPIとDLには発現していたが、OLと第三脳(TC)、SOGにはわずかにしか発現していなかった。55HTR-BはTCおよびSOGで概日時計のタンパク質CLKと共存していた。従って、セロトニンおよびその受容体は概日振動系の出力に何らかの形でかかわっていることが示唆された。 (2)D.fasciatusより、long-wave(LW)opsin,およびblue opsinをコーディングするcDNAをクローニングし、その構造を推察した。また、リアルタイムPCRでその転写活性を調べた。LW opsinの方は、転写活性に日周リズムが見られなかったが、blue wave opsinの方はZT8にピークを示した。LW opsinの方は個体発生でSOGに強く発現していたものが,成虫になると、前大脳に強く発現するようになる。LW opsinは脳では日周リズムがなかったが、網膜では夜に高い発現をする。両opsinはこのように発現場所と発現パターンが大きく異なっていた。このコオロギは発育段階によって、3つの異なる光周性を示す。また、概日リズムや睡眠など出力系の異なる測時機構が存在すると考えられる。それぞれの出力系に独特の光受容系が存在する可能性はある。 (3)D.fasciatusの時計遺伝子timelessのクローニングと発現箇所の探索を行った。
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