研究概要 |
多因子疾患であるアレルギーは、環境要因と複数の遺伝子素因が複合的に作用することにより疾患感受性が決定される。我々の研究グループでは、IgE抗体を介したI型アレルギー反応において中心的な役割を果たす高親和性IgE受容体構成分子の遺伝子多型の幾つかがアレルギー疾患の原因遺伝子多型であることを分子生物学及び統計学的手法により明らかにし報告してきた(Hasegawa,M.J.Immunol.2003,Nishiyama,C.J.Immunol.2005)。今回、IgE受容体αサブユニット遺伝子プロモーター上の第二の多型としてアレルギー疾患との相関が報告されている-315C/T多型(Potaczek,D.Allergy 2006,Bae,J.S.J.Allergy Clin.Immunol.2007)が遺伝子機能に及ぼす影響を解析し、この多型が2種類の転写調節因子Sp1とHMG関連分子の結合活性に関わることによりヒト好塩基球表面の受容体発現量を左右することを示した(Kanada,S.J.Immunol.2008)。ところで、アレルギー疾患原因遺伝子多型研究では、疾患感受性への関与が報告する研究グループによってしばしば異なる結論を得るが、その原因の一つとして遺伝子多型の出現頻度が民族間で異なることが挙げられる。この問題を考慮してIgE受容体構成分子の遺伝子多型がアレルギー疾患に及ぼす影響を明らかにするため、日本とポーランドのヒト遺伝子多型の比較検討を進め、幾つかの多型について他多型との連鎖が民族間で大きく異なることを観察している。また、αサブユニットの上流プロモーター近傍に存在する多型の遺伝子発現機能への関わりを解析し、転写調節因子YY1の結合に決定的に影響することを見いだした。
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