これまでの燃料電池の動作温度空白領域(200℃から500℃)においても、高い性能を有する酸化物燃料電池用材料の開発を目指し、こうした温度領域で高い性能を有する燃料電池を作製するために、3価の希土類ドープドセリア薄膜固体電解質材料の合成と、その合成ルートの違いが電解質/電極の界面構造のナノレベルのおける変化と物性に与える影響を精査することを目的に実験を行った。研究年度2年目にあたる平成20年度は、昨年に引き続き、3価の希土類ドープドセリア固体電解質薄膜を、従来手法である電気泳動法と、新規薄膜合成手法である、ミストCVD法により合成し、その微細構造の特徴についての考察を行った。高分解能透過電子顕微鏡観察により、ナノヘテロ界面構造を定量的に解析したところ、固体電解質と電極間界面において、電極活物質がサブミクロンから、ナノメータースケールで、固体電解質内への拡散を起こし、その結果、その拡散した電極活物質(NiO)の周囲において、酸素欠陥の秩序化が進み、固体電解質と電極界面の酸化物イオン伝動を大きく妨げるナノヘテロ界面構造が形成されることを、薄膜作製条件を変化させながら、系統的に解析を行った。このように、通常の薄膜X線回折試験などの方法では、知覚しがたいほどの小さな大きさで、薄膜デバイス中における固体電解質/電極間界面中に広がる、ナノ構造の特徴を、高分解能電子顕微鏡による観察、イメージアナリシス及びエネルギー損失分光法を用いた酸素欠陥の秩序化度合いの定量的な解析を組み合わせて行うことで、薄膜固体電解質の性能向上を妨げていた、ナノレベルにおける構造の特徴が明らかになり、そのナノヘテロ界面構造を、導電特性を最大化できるように、最適化することで、これまでの薄膜素子の能力を、大幅に向上させることが可能であることを明らかにした。
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