研究概要 |
トレハロースを直接代謝する酵素トレハラーゼはゲノム中に1コピーである。そこでこの遺伝子に注目し、そのノックアウト変異株および過剰発現体を作出して解析した。TreTko,およびTreOXは、通常生育条件下では表現型が観察されなかったが、TreToxにおいては根の長さ及び分枝パターンに異常が見られた。即ち、TreToxでは、根が短く、分枝が活発であった。各系統のトレハラーゼ活性及び内生トレハロース量を求めた。TreOX株では、導入遺伝子発現量に依存して、トレハラーゼ活性が上昇していた。TreTko株では活性はほとんど検出されなかった。トレハロース量はTreTko株では野生株に比べて約2倍に上昇していた。TreOX株では微量の蓄積しか見られなかった。以上の結果からトレハラーゼ遺伝子の発現量に依存して細胞内トレハロース量が変化することが分かった。シロイヌナズナにおいては、高濃度トレハロース存在下では、根の伸長は阻害されることが知られている。100mMトレハロース存在下で発芽した野生株幼苗の根の長さは20mm程度に制限された。その時トレハラーゼ阻害剤VXAを添加した場合は更に根の生育が制限され、12mm程度に抑えられた。一方、過剰発現TreOX株では、トレハロースによる根の伸長抑制が緩和されていた。緩和効果はトレハラーゼ遺伝子の発現量に依存していた。また、VXAによりその緩和がキャンセルされることから、トレハラーゼの活性に依存したトレハロース耐性が存在することが明らかとなった。
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