Step1基板の表面処理 過飽和溶液浸漬によるシグナル分子担持に有利且つ生体適合性のアパタイト及びバイオガラスの表面層形成を試みた。アパタイト層形成の基材には創外骨折固定具用材料として使用される陽極酸化チタンを選択した。低コンタミネーションリスク及びエンドトキシンフリーである医療用輸液を混合して得られるリン酸カルシウム過飽和溶液への浸漬により、低結晶質アパタイト層が一様かつ均一に基材表面を被覆可能であることが分かった。一方、バイオガラス層形成には汎用性の高い純チタンからなる板状基材を使用し、メソポーラスな層形成に成功した。これらの手法を用いた基材表面処理はStep2の前処理の手法として有効と考えられる。 Step2構造タンパクとシグナル分子の担持 低結晶質アパタイト層で被覆した陽極酸化チタンに、医療用輸液混合により作成したリン酸カルシウム過飽和溶液を使用してFGF-2を担持させる温度条件について検討した。FGF-2の担持量は処理温度を低くすると減少するが、FGF-2の失活リスクが低い15℃及び20℃でも0.2μg/cm^2程度担持可能であることが明らかとなった。また、同基材の層中に固定されたFGF-2の細胞増殖活性は、他の処理温度で処理した基材に比べて有意に高かった。つまり、同手法でFGF-2を基材に担持させる場合、処理温度を15〜20℃とすることにより基材自体の生体活性が極大となることが結論付けられた。 さらに、FGF-2と同時にコラーゲン、アスコルビン酸塩、亜鉛を同時に担持させる実験にも着手した。表面処理層とシグナル分子担持層が同じアパタイトの場合、上記の2段階操作が包含するコンタミネーションリスクの低減が可能と考え、前処理を省略してもシグナル分子を担持可能な過飽和溶液を検討した。現在、FGF-2とアスコルビン酸塩が前処理なしで同時担持可能であることが明らかとなっている。
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