研究課題
イネの最重要病害であるイネいもち病の発生は環境要因に大きく影響されるが、そのメカニズムについての知見は乏しい。本研究では、温大帯と熱帯のイネいもち病菌の株の間の違いについて注目しつつ、様々な環境要因がイネいもち病菌の病原性に与える影響について分子レベルで明らかにすると同時に、優れたイネいもち病防除法の開発の基礎となるデータを得ることを目指す。温帯由来のイネいもち病菌として、日本で単離され、形質が安定している北1株を選択した。環境要因として、理研天然化合物ライブラリーNPDepo由来の約6700化合物を選択して、イネいもち病菌の存在下及び非存在下におけるイネに対する過敏感反応(hypersensitive response,HR)の誘導効果をみた。6700化合物をスクリーニングした結果、イネいもち病菌の存在下でイネに強力なHRを起こす天然化合物候補として46化合物、イネいもち病菌の非存在下でイネに強力なHRを起こす天然化合物候補として43化合物を見出した。これらの化合物は新たな作用点の農薬開発のリード化合物として用いられる可能性がある。更に新たな環境要因として、植物由来の緑の香り成分4化合物(trans-2-Hexenal、cis-3-Hexenol、n-Hexanal、cis-3-Hexenal)を選択して、イネいもち病菌に対する抗菌効果をみた結果、trans-2-Hexenalとcis-3-Hexenalが明らかな抗菌効果及び感染特異的器官の形成阻害効果を示し、イネいもち病菌に特徴的な形態変化を引き起こした。これらの化合物は実際のイネとイネいもち病菌の相互作用において機能している可能性があり、更にイネいもち病防除に利用できる可能性がある。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Current Genetics 47
ページ: 298-306
Soil Microorganism 62
ページ: 106-113