研究概要 |
本研究は、クカビトウリルの大環状構造とその分子認識能や金属結合能を利用して、動的機能などをもつ金属錯体型超分子のデザイン・合成・機能化を行うことを目的とした。今年度は、超分子の部品となるクランプ状金属配位子のデザインおよび合成を行った。クカビトウリルは様々な環サイズの異性体について合成報告があり、クランプ状多座配位子との錯体形成に最適な分子のデザインを行うことができる。今回、クランプ状金属配位子の合成については、基本骨格をDiels-Alder反応により約10工程で構築し、その両末端にクカビトウリルの上下の縁の部分にさまざまな金属結合部位(アミノ基、カルボキシル基、イミド基など)を導入した。また、金属イオン(Cu(II),Ag(I),Ni(II),Pd(II),Pt(II),Zn(II)など)との錯体形成を試みることによって、クランプ状配位子の最適な分子長の探索や、クランプ状金属配位子の両端に導入する金属配位部位の配位元素やその配位方向による最適化も試みた。合成した分子の溶解性の問題などがあり、いまだ目的とする超分子は得られていないが、今回合成したクランプ状金属配位子は、その鍵中間体からさまざまな官能基をもつ分子に変換できるため、現在配位子部分の変換や(ピリジル基など)溶解性向上のための長鎖アルキル鎖の導入などを検討し、さまざまな遷移金属イオンとの錯体形成とその構造解析を行っている。
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