本研究は高エネルギー加速器研究機構Bファクトリーで生成しBelle(ベル)検出器で記録された700万以上のB中間子対のデータを用い、クォーク反応の基礎パラメータを測定することを目的とする。特に、素粒子標準理論の一部である小林益川行列が持つ複素位相φ1を一意的にかつ精密に測定し、標準理論の予想と比べることにより、標準理論を越えた新しい物理が生み出す量子効果を探索する。 平成19年度は、B中間子の崩壊のうち、B^0→D^<*+>D^<*->Ks崩壊についてBelle実験として初の測定を行い、論文を発表した。得られた崩壊分岐比はこれまでの世界平均と一致する結果であった。CP非対称度の測定結果は未知の共鳴状態の存在を示唆するものであり、今後の精密測定による解明が必要とされる。 また、B^0→π^+π^-Ksという三体崩壊を用い、ダリッツ解析をおこなうことにより、終状態の波動関数を分析する解析を推進している。崩壊の時間分布に現れるCP対称性の破れを測定することにより、sinφ1とcosφ1を同時測定するためのソフトウェアの開発をおこなった。これを用いてφ1を一意的に求めるための方法を確立し、モンテカルロシミュレーションにより、正しい結果が得られることを確認した。データの選別も終了し、系統誤差としてどのようなものがあるかも主なものを確かめた。
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