Hansen研究員は、これまでスカラー場を伴う球対称時空のダイナミクスをより精緻に解析するため、数値相対論のための新しいコード開発およびその応用に取り組んでいる。具体的には、必要な部分においてより計算精度を上げるためにAMR(adaptive mesh refinement)を使った数値計算法の完成に取り組んで来た。本年度はそれをワームホール系への場の降着解析に応用した研究を行い、系統的なシミュレーション計算を実行することにより得られた成果を学術論文として発表している。それと並行して、滞在期間延長により遂行する研究テーマの下準備を開始し、具体的なプログラム作成に取りかかっている。これはダークエネルギーのブラックホールへの降着可能性を数値的に調べるもので、これからの観測とも繋がる重要な研究になると考えられる。 一方、前田はそのダークエネルギーを中心とした研究に取り組んできた。ダークエネルギーの候補の一つである一般化された重力理論のひとつであるf(R)重力理論の問題点を指摘した。また、高次元時空に於けるブラックオブジェクト(ブラックホール-ブラックストリング)間の相転移の様子が次元数により異なることを示した。さらに一般化された重力理論の元祖であるスカラー・テンソル理論において、その宇宙論的解析が力学系として行えることを示し、新たなインフレーションモデルも発見した。これらの研究は来年度の共同研究に大いに生かされると期待される。
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