本研究では、種子繁殖とともにクローン成長を行うクローナル植物が「二つの繁殖様式を持つことによりどのように集団を維持しているかを明らかにすること」を目的としている。林床性のクローナル草本Convallaria keiskeiを対象に、ラメットのジェノタイプと位置を特定し、2003年から継続して成長と生存・開花に関する追跡調査を行い、これまでに個体群構造とその動態に関する解析を行ってきた。そこで本年度の研究では、これまで調査を行ってきたラメットの地下茎を掘り取り、ラメット間の連結を調査することで、クローン成長がラメットとジェネットの配置パターンならびにその変化に与える影響を検証した。 その結果、地下茎の伸長は直線的で、同一ジェネット内でも近隣のラメットよりも離れたラメット間で連結していることが確認された。また、地上部の空間分布は、高密度やジェネット数の増加に伴って、集中的なパターンを示した。次に、地下茎の構造から各ラメットの由来(親ラメット)を特定したところ、クローンの広がりに方向性は認められなかった。さらに、娘ラメットは周囲の密度に関係なく出現し、地上部の成長は連結の程度に影響されなかった。 従って、スズランで見られるラメットの集中分布はジェネットが拡大する過程での地下茎の重なり合いによって形成されていることが明らかになった。一方、断片内での資源のやりとりや高密度での資源競争などははっきり認められず、連結や分布パターンがラメットの動態に与える影響は小さいことが示唆された。
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