(1)2008年11月9日、史学会日本史部会(近現代)にて発表した「維新期日田の地域通貨流通」を元に論文を執筆し、社会経済史学会に2度投稿した。本論文は、明治初期において小額貨幣では地域通貨(藩札)が支配的だった事実を発見し、そのことが近代的信用貨幣制度の前提になったことを論じたが、掲載の決定には至らなかった。 (2)長野県上田市立博物館に出張し、幕末維新期の商人の帳簿類を初めとする諸史料を収集した。また、信州における重層的な貨幣流通に注目し、収集史料に基づいて維新期上田における貨幣流通を明らかにする論文を執筆した。 (3)旧両替商であった銭屋佐兵衛・佐一郎家の文書である「逸身家文書」を、整理・目録化して解題・解説を付した『大阪両替商逸身家文書現状記録調査報告書』の作成に寄与した。なお、本報告書は「16-19世紀、伝統都市の分節的な社会=空間構造に関する比較類型論的研究」(科学研究費補助金・基盤研究(S)、研究代表者=吉田伸之)と成果を共にしている。 (4)「政体取調一件に見る明治初期行政文書の性格」を執筆し、歴史研究の基礎となる文書学の立場から国立公文書館が所蔵する行政文書の性格を明らかにした。 (5)新潟県教育庁が推進する佐渡金銀山の世界遺産化の動きに関連して、研究委託先のお茶の水大学・小風秀雅氏と協力し、三菱史料館・宮内庁書陵部の史料を収集するとともに、幕末から明治期にかけての金流出と世界に及ぼした影響を考察した。
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