記憶・学習など脳高次機能の基盤には、特異的な出入力を処理する神経回路網が存在する。神経回路形成において、神経細胞は異なる性質を持つ2種類の突起(軸索と樹状突起)を適切に発達させる必要がある。 神経活動に伴う細胞内Ca^<2+>上昇により活性化される分子標的候補として、多機能性カルシウム/カルモデュリン(Ca^<2+>/CaM)依存性タンパク質リン酸化酵素(CaMK)(たとえばCaMKI、CaMKII、CaMKIV)が知られているが、CaMKが軸索や樹状突起の発達を制御するのか、また、どのように働くかは不明な点が多い。そこで申請者は、これまで一貫してこの課題の解明を目標とし、神経活動やリガンド刺激に伴う細胞内Ca^<2+>濃度上昇の下流で複数のCaMKが神経回路形成に貢献していると仮説を立て、その検証に取り組んでいる。 本年度の研究により、大脳皮質形成の初期発達過程において、神経伝達物質などの下流でCaMKIアイソフォームが軸索発達に貢献することを複数の実験系で明らかにした(Ageta-Ishihara et al.投稿中)。
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