本研究では、地震発生メカニズムを推定するために、震源域下における不均質構造がどのように地震発生に影響を与えるのか、についての知見を得るべく、内陸地震の地震発生域下に見られる不均質構造の共通因子を抽出し、それらの不均質構造が地震発生に果たした役割について考察する。本年度は、マグニチュードが6以上の地震が過去150年で10個以上発生している中国地方において、反射法解析により最上部マントルまでの不均質構造の抽出を行った。まず、2000年鳥取県西部地震の震源域において稠密臨時観測網による余震の波形解析を行い、詳細な反射構造を推定した。それらの結果、3つの反射波層(コンラッド面、モホ面、フィリピン海プレート上面と結論づけた)を検出し、 (1)下部地殻の厚さが本震震源の直下で変化していること、(2)本震断層の両側のおける反射波の強度が異なり、断層の鉛直な下部延長があることがわかった。次に、2000年鳥取県西部地震震源域で見られた反射波層がどのように広がっているかについて広域のデータ・観測網を用いて調べた。この解析と2000年鳥取県西部地震震源域における解析を統合することにより、モホ面とフィリピン海プレート上面の広がりを詳細に推定し、フィリピン海プレートの先端が中国地方北部にまで達していることがわかった。さらに、三瓶山や大山などの火山下16-22kmに反射波層を検出した。これらの位置は2000年鳥取県西部地震を含むマグニチュードが6以上の地震と相関があった。データの分解能のため予察的な結論ではあるが、山陰地方で発生した地震が2000年鳥取県西部地震と同じように、断層が異なる物質の境界に位置し下部地殻までほぼ鉛直な断層の下部延長が存在する可能性が示唆された。これらの結果は、山陰地方における火山の成因、および、地殻内地震の発生メカニズムを推定することに大きく寄与すると考えられる。
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