ヒトの血漿とほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液のpHや温度を上昇させると、擬似体液中にリン酸カルシウムナノ粒子が析出する。最近我々はこの微粒子が高活性にヒドロキシアパタイトを誘起することを発見し、アパタイト核と名付けた。有機高分子材料は柔軟性に富み、複雑な形状への加工や種々の材料との複合が容易である利点を持つ。これらの特徴を活かし、有機高分子材料に生体活性を付与することが可能になれば、高い機能を有する多様なインプラント材料の開発につながる。本研究では、多孔質ポリエチレンの細孔内部にアパタイト核を電気泳動堆積し、印加電圧を種々変化して条件を最適化し、柔軟性を有する有機高分子材料に高い生体活性を付与することに成功した。また、多孔質ポリエチレンを擬似体液に浸漬し、擬似体液の温度を上昇することで細孔内にアパタイト核を析出し、ポリエチレンに高い生体活性を付与することに成功した。さらに、アパタイト核を各種生体材料へ応用する研究も並行して進めた。チタンは表面に酸化皮膜を形成し、高い生体親和性、高い耐食性、高い強度を有するが、生体活性の発現に時間を要する。チタン金属に短期間のうちに発現する生体活性が付与できれば、生体材料としての機能は大きく向上する。本研究では、表面に微細な細孔を形成したチタン板を擬似体液に浸漬し、電磁誘導を用いてチタン板を直接加熱することにより、チタン板表面の細孔内部に多数の微小なアパタイト核を析出し、チタンに高い生体活性を付与することに成功した。以上の研究成果を1編の論文発表、並びに、22nd International Symposium on Ceramics in Medicine、9th Asian BioCeramics Symposiumおよび第31回日本バイオマテリアル学会大会において、口頭あるいはポスター発表を行った。
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