本研究は100年にわたって先駆的取り組みを続けてきた米国高等教育における学生支援の変遷プロセスと実態を明らかにすることを通じて、大学教育における学生支援の意義と役割について考察することを目的とした。1960年代の米国高等教育における学生数の急増を受け、学生支援の発展が急激に促され、組織、人員、提供するプログラムなどにおいて量的拡大が進行し、1980年代の大学教育改革ブームにおいては教室外における学生の成長を重視する傾向が全米で強まり、学生支援の質的向上に注目が集まった。これらの外的要因に加え、学生支援の専門性開発という内的動機が合わさり、学生支援の活動の根本となる理念の変革が意図的に誘導され、現在の学生の学習を支援するための学生支援のあり方へと転換が図られた経緯を持つ。現在、米国大学教育の中心は学生の学習成果を元にした教育効果の明示化である。そしてそれは学生支援においても同様で、特に学生の知力発達に学生の内面的成長が欠かせないという視点から、多様な学習経験を提供するための要素として、学生支援が果たす役割の大きさが強調されている。 本研究では上記の視点を歴史的背景、1980年代における転換期の議論、過去20年間における学習を中心にした学生支援への転換プロセス、そしてブリッジウォーター州立大学、ペンシルバニア州立大学における事例研究の比較から見た、現代的学生支援の実態を明らかにすることで実証した。
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