平成19年度の成果は以下の通りである。 1)HBZトランスジェニックマウスの作製 生体でのHBZ遺伝子の機能を解析するためにCD4特異的プロモーター・エンハンサーを用いトランスジェニックマウスを作成した。脾臓のCD4陽性T細胞の増加を認めたことからHBZはin vivoにおいてもT細胞の増殖促進作用を示すことが明らかとなった。またこのトランスジェニックマウスでは12ケ月以降にリンパ腫の発生を有意に認めた。 2)HBZと相互作用する宿主タンパク質の同定 Yeast two-hybrid法によりHBZと相互作用する宿主因子を探索した。その結果、31種類の遺伝子を同定した。この遺伝子には以前にHBZと結合することが報告されたJunBなどが含まれている。多くの遺伝子はbZIPドメインを有していた。これらの候補タンパク質とHBZとの結合を免疫沈降法により確認した。その結合部位を明らかにするためにdeletion mutantを作製している。 3)HBZトランスジェニックマウスにおける炎症反応 HBZトランスジェニックマウスに抗体により関節炎を惹起するとコントロールに比べて炎症の増悪が認められた。この分子機構を明らかにするためにCD4陽性Tリンパ球によるサイトカイン産生能を解析しIL-6産生の増加を認めた。 4)HBZ発現細胞の接着能・遊走能 HBZトランスジェニックマウスでは皮膚・肺胞にCD4陽性Tリンパ球の浸潤を認めるが、同様の所見はHTLV-1キャリアにおいても観察される。HBZトランスジェニックマウスよりCD4陽性Tリンパ球ではLFA1の発現が増加しており、ICAM1への接着能が亢進していた。またICAM1をコートしたプレート上での遊走性も充進しており、皮膚・肺への浸潤は、このような機序が原因であることが推測された。
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