X線CCDは軌道上での放射線損傷によりCTEが下がり、結果としてゲイン及びエネルギー分解能が劣化する。CTEはCCD面上で一様ではなく、電荷転送列ごとに値が異なる。しかし「すざく」以前の衛星には各列のCTEを測定する機能がなく、従って精度の高い電荷補正は不可能だった。そこでXISは衛星搭載X線CCDとしては世界で初めて電荷注入(CI)機能をつけた。これはCCDの転送列ごとに一定量の電荷を注入して読み出すことで、各列のCTE測定を可能にするものである。これによりXIS最大の武器である高エネルギー分解能をより長期間維持することが可能となった。 我々はCI機能により注入した電荷量が安定しており、かつCI機能で正確にCTEを測定できる事を明らかにし、CI機能の有用性を証明した。さらに「すざく」打ち上げ後もCI機能の運用を行い、エネルギー分解能がCI機能を用いない場合(半値幅:176eV)に比べ、有意に改善する(同:161eV)事を証明した。 また、銀河面に存在する超新星残骸CTB37AをX線観測し、熱的X線放射と非熱的X線放射を初めて空間的に分離して検出した。前者は、X線放射強度から求めた年齢と、断熱膨張を仮定したモデルから求めた年齢とが約8000年で一致し、比較的年老いた超新星残骸であることが明らかになった。後者はX線強度の時間変動は無かったものの、X線スペクトルより中性子とそれを囲む雲であることをあきらかにした。
|