研究概要 |
1. Aβ過剰産生XCu/Zn-SOD欠損マウスの作出および病態解析 アルツハイマー病(AD)の原因物質であるアミロイドβ(Aβ40,Aβ42)ペプチドは、高い凝集能と神経細胞毒性を有することから、本ペプチドを標的とした治療法の開発競争が世界中で行われている。現在、多くのAD病態モデルマウスは、Aβ凝集体の沈着のみを再現したものであり、ADに特徴的な長期に渡る酸化ストレスを同時に再現したモデルマウスは存在しない。本研究者らのこれまでの研究により、酸化ストレスによってラジカル化した'病的な'Aβは、AD発症に重要であることが明らかになった。このことから、脳内の酸化ストレスに対する防御機構(Cu/Zn-SOD)が破綻した新規AD病態モデルマウスを作出した。現在、滞りなく生育しており、生後12ヶ月齢(2008年5月)の時点で、脳内へのAβ沈着を免疫組織化学的手法にて、学習記憶機能をモリス水迷路試験にてそれぞれ病態解析を行う予定である。 2. Aβオリゴマーを標的としたRNAアプタマーの作成 抗体に匹敵する高い親和力と特異性を有するRNAアプタマーは、それ自身が免疫原になりにくいことから副作用の少ない治療薬として近年注目されている。本研究代表者は、アプタマーの開発技術修得のため、UCLAのTeplow研に研究留学した(2007年6月〜2008年3月)。当地では、標的として毒性本体であるAβ40オリゴマー(凝集中間体)に着目した。しかしながら、準安定なAβ40オリゴマーは、容易に凝集するため、in vitroでの調製は難しい。そこで、ルテニウム錯体を用いた光架橋化学反応によって、安定化されたオリゴマーを調製した。これを用いて、アプタマーを試験管内人工進化法にて選別したところ、Aβ40にきわめて高い親和力を有する複数のクローンの単離に成功した。しかしながら、これらの特異性をドットプロット法にて評価したところ、オリゴマーと比べて凝集体により強く結合したことから、アプタマーの選別過程で凝集体そのものを陰性対照として用いる必要性が示唆された。一方、いくつかのアプタマーはAβ42凝集体と比べてAβ40凝集体にきわめて高い結合能を示した。
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