研究概要 |
懸念的被透視感は、隠し事などの気づかれたくない事柄を、やりとりしている相手に気づかれているかもしれないという感覚と定義される。懸念的被透視感に関するこれまでの研究では、生起する反応の特徴が主に検討されている(太幡,2005など)。また、懸念的被透視感による反応が与える印象についても、評定者による反応の印象評定が行われている(Tabata.2006)。しかし、懸念的被透視感による反応が一般的にどのような印象を与えるのかについては明らかにされていない。そこで、本年度は、これまでの研究で明らかにされた懸念的被透視感に特徴的な反応が、一般的にどのような印象を与えるのかについて検討することとした。懸念的被透視感による反応としては、言語的方略、非言語的反応に着目し、実験参加者が大学院生に扮して実験協力者に面接を行った太幡(2007)の実験状況を模して、面接者役の実験協力者(以下、面接者)の演技により映像刺激を作成した。そして、実験参加者(80名)に刺激映像を示し、面接者の反応の違いが印象に与える影響を分析した。その結果、面接者が、視線回避、自己接触といった、懸念的被透視感に特徴的とされる非言語的反応をする映像ではしない映像と比べて、落ち着きがなく、面接者としての能力が低く、発言の疑わしさが高く、大学院生らしくない印象を実験参加者に与えていた。一方、面接者が、欺瞞的な印象を他者に与えやすい言語的方略といった、懸念的被透視感に特徴的とされる言語的方略を用いる映像では用いない映像と比べて、発言の疑わしさが高い印象を実験参加者に与えていた。しかし、他の印象に関しては、言語的方略の違いによる差が見られなかった。以上の結果から、懸念的被透視感によって生起する沈黙や視線回避が、不自然な印象を他者に与え、隠し事を気づかれてしまう際の手がかりとなることが示された。
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