懸念的被透視感は、「自分で直接伝えていないのにもかかわらず、気づかれたくない事柄を相手に気づかれているかもしれないと感じる感覚」と定義される。対人コミュニケーションにおける懸念的被透視感と類似した意識に関するこれまでの研究では、相手に気づかれている程度を、実際に相手が気づいている程度よりも過大評価して推測するというバイアス(透明性の錯覚)に主に関心が向けられてきた。そのため、懸念的被透視感のような主観的感覚が生じた際の対人コミュニケーションの進行の様相については十分に検討されてこなかった。この点を検討することで、対人コミュニケーションの進行について理解を深めることができると考えられる。以上のことから、懸念的被透視感を感じた者が示す反応と、その反応に対して他者が抱く印象を検討すること目的とし、研究を進めてきた。 本年度は、これまでの検討で得られた知見を統合するために、相互作用状況の観察的検討を実施した。2名で実験に参加した実験参加者に対し、相手にウソをつくことで自分に有利にゲームを進めることができるボードゲームをするように求め、その様子を録画した。また、懸念的被透視感を感じていたか否か、相手の発言を疑わしいと思った程度やその理由について、ゲームが進行するたびにチェック用紙に回答を求めた。その結果、懸念的被透視感を感じていたときは感じていなかったときと比べ、視線回避などの焦りを反映した非言語的反応が多く表出されていることが示された。また、相手は、その非言語的反応を手がかりとして、懸念的被透視感を感じた者に対して疑わしい印象を抱いていることも明らかとなった。
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