マテリアルに結合するペプチドを自在に応用するためには、その相互作用を定量的に解析する必要がある。具体的には、その結合の強度およびその特異性や結合サイトを知ることが挙げられる。本年度はファージディスプレイ法を利用したスクリーニングにより得られた、βシートペプチドが構成する自己組織化ナノファイバーに特異的に結合するペプチドとナノフアイバー間相互作用の詳細な検討を行った。得られたペプチドを提示したファージの結合を酵素結合免疫測定(ELISA)により評価したところ、ライブラリーファージと比較して有意に強く標的ナノファイバーに結合した。さらに、構成アミノ酸がわずかに異なるペプチドやアミノ酸配列のみが異なるペプチドから成るリファレンスナノファイバーと結合を比較した結果、標的ナノファイバー特異的に結合することがわかった。さらに、その結合強度や特異性は得られたペプチドそれぞれで異なっていることから、アミノ酸それぞれが結合に寄与していることが示唆された。また、それらペプチドのファージに提示されたペプチドを化学合成し、円偏光二色性測定および赤外分光解析を行った。全てのスクリーニングにより得られたペプチドは、通常溶液中ではランダムコイル構造であり、特定の二次構造は形成しないことが分かった。一方、標的ナノファイバーと相互作用させた状態で測定した結果、特定のペプチドは逆平行βシート構造に転移して結合しており、その結果として強い結合および高い特異性を獲得していることを明らかにした。
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