本年度の前半は、cone-manifold上のLaplacianの固有値について研究を行った。それについて、コンパクト多様体上のcone-manifoldの計量に収束するRiemann計量の列に対し、対応するLaplacianの固有値が収束するという結果を得た。またその応用として、Laplacianの固有値に関するいくつかの不等式のcone-manifoldに対する一般化を行い、特にYang-Yauの不等式について、等号が成立する例がcone-manifoldで与えられる可能性について考えた。その後、上記の主張を含むRowlettによる結果があること、Yang-Yauの不等式についてJakobsonらが同じ問題を考察し、数値計算を行っていることを知り、後半は扱う問題を変えることにした。 本年度の後半は、コンパクト負曲率cone-manifold上の測地流に関する研究を行った。そして、singularityがない場合にはよく知られた性質である、閉軌道の稠密性、稠密な軌道の存在、エルゴード性、安定葉層及び不安定葉層の葉の稠密性などを示した。また、ホロスフェリカル葉層の一意エルゴード性に関して、Roblinによる結果があることを知った。学位取得に向けて、これらの結果についての執筆を行っている。また、例えばエントロピーに関する結果など、singularityがない場合の結果で他に一般化できるものがないか、あるいは同じく特異性のある力学系であるビリヤードの問題と関連させられないか、といった問題を考えている。
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