研究概要 |
我々はCygnus Loop超新星残骸を北東端から南西端にかけて、すざく衛星で11点、XMM-Newton衛星で7点観測した。すざく衛星の低エネルギー側の高い感度によって、初めてこの天体から高階電離した炭素、窒素のK輝線を検出することに成功した。また、空間的に分離した詳細なスペクトル解析から、高温(〜0.5keV)で重元素が豊富な(爆発噴出物起源と考えられる)プラズマが、低温(〜0.2keV)の重元素が少ない(爆発噴出物によって掃き集められた)プラズマに取り囲まれて、この残骸中に大きく広がっていることが判った。珪素、イオウ、鉄の爆発噴出物は南部に北部の2倍程度も多く分布することが判った。我々はこの爆発噴出物の非一様な分布は爆発の非対称を反映していると考えた。これらの結果はアメリカの天文専門誌1編と日本の天文専門誌2編で発表した。 Puppis A超新星残骸はXMM-Newton衛星による5回の観測でそのX線放射領域ほぼ全体が観測された。我々は全てのXMM-Newtonデータを使ってさまざまな元素の輝線について等価幅分布図を作成した。その結果、鉄以外の全ての元素について等価幅が強調された領域、すなわちその元素が豊富な爆発噴出物の痕跡、を発見した。珪素とイオウについては、北東部分にのみ爆発噴出物の痕跡が残っていたことから、我々はこれらの元素は爆発時に非対称に噴出したと推測した。さらに我々はPuppis A北東領域に、青方偏移した輝線を持つ爆発噴出物の塊を発見した。一方で近年、超新星爆発の後、中心に残った中性子星は高速で南西に向かって動いていることが判った(e.g., Winkler & Petre 2007)。従って、今回我々が発見した北東領域の爆発噴出物は、超新星爆発時に中性子星に蹴り飛ばされた反跳物質と推測できる。これらの結果は、アメリカの天文専門誌で5月に発表することが決まっている。
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