1オオバナノエンレイソウにおける自家不和合性の生理的機構 系統学的研究によるとオオバナノエンレイソウにおける自家不和合性は他の植物群とは異なる進化的背景を持つと考えられるが、その生理的・遺伝的機構に関しは不明な点が多い。交配実験と組織学的観察から、自家不和合性反応は柱頭上で生じ、自家花粉の花粉管伸長が停止することで完了することが明らかになった。 2オオバナノエンレイソウにおける雄蕊矮小化現象とその適応的意義 オオバナノエンレイソウは雌雄同株植物として認識されてきたが、これまで複数の集団で雄蕊が矮小化している個体が確認されている。調査の結果、これらの個体は雄性不稔であり、自家和合性集団において他殖に特化することにより繁殖成功を高めているこが示された。故に、オオバナノエンレイソウは画一的な雌雄同株ではなく、条件的な雌性両全性株異株であることが明らかになった。 3オオバナノエンレイソウにおける雄性不稔個体が集団の繁殖様式に与える影響 上記の研究から、オオバナノエンレイソウの自家和合性集団には雄性不稔個体が存在することが示されたが、その出現頻度は集団間で大きく変動した。調査の結果、出現頻度の低い集団では両性個体による自殖だけで集団が更新されている一方、出現頻度が高い集団では両性個体は雄として機能し、雄性不稔個体による他殖だけで集団が更新されていることが示唆された。したがって、自家和合性集団における雄性不稔個体の出現頻度は、両性個体の性的な役割だけでなく、集団の繁殖様式にも多大な影響を与えるため、この種における新たな繁殖様式の存在が明らかになった。
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