遷移金属化合物などの強相関電子系において、近年数多くの多彩な物性が発見され、その起源に関して電子の持つ軌道自由度の重要性が指摘されている。本研究では、軌道自由度を持つ強相関電子系を記述するミニマムな模型である二軌道ハバード模型を取り上げ、強相関電子系における基本的かつ重要な性質の一つである金属絶縁体転移およびその近傍の振舞いについて調べた。その際、クラスタ動的平均場理論を用いることによって、特に非局所的なスピン・軌道揺らぎの効果に注目した。我々は、フント結合による非局所的な揺らぎの効果が系に絶縁体的な振舞いを誘起することを明らかにし、モット転移における非局所揺らぎの重要性を示唆する結果を得た。この結果は、国内外で学会発表し、国際会議録としても発表、また論文として投稿中である。さらに、軌道間のバンド幅の違いを考慮することによっても同様の振舞いが見られている。これらの非局所揺らぎによるモット転移の特徴的な振舞いについて、単一軌道模型におけるものとの類似性も含めて、今後さらに解析を進める予定である。 また、近年の微細加工技術の発達に伴い、量子ドット系などのナノスケール電子系においても、電子の軌道自由度を制御することが可能になってきている。本研究において行った三軌道自由度を持つ量子ドット系における近藤効果の系統的な解析結果を、本年度、論文として発表した。
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