次期気球実験に向け、30cm角サイズのガンマ線イメージング検出器の開発を進めている。昨年度に引き続き、解析手法の改良等を進めることでさらに精度の向上に成功した。しかし、コンプトン反跳電子のトラッキングアルゴリズムの最適化はまだ完全なものとは言えず、今後の課題であり、これを達成することによって精度を原理限界まで近付けることができると期待される。また、昨年度に引き続き、有効面積拡大のためのガスの研究を行い、これまでの1気圧のアルゴンベースのガスから1.4気圧の四フッ化炭素ベースのガスに変更し、ガンマ線検出器としての性能を落とすことなく2倍の検出感度を得ることに成功した。並行して、次期実験以降に向け、新たな実験を行った。現在のガンマ線検出器はコンプトン散乱を利用したものであるが、入射ガンマ線のエネルギーが10MeVをこえると、電子陽電子対生成が主な相互作用となってくる。ガンマ線検出器は、原理的に電子陽電子のトラッキングが可能なはずで、しかも世界の現行の他の検出器よりも良い角度分解能が達成されると期待される。つまり、対生成事象を検出できれば、同じ検出器を用いてエネルギー帯域を広げることができ、かつ分解能も良いものができるということである。そこで、今回産総研と共同でレーザー逆コンプトンビームを用いた10Mev以上のガンマ線を用いたビーム試験を行った。その結果、イメージングに成功し、角度分解能も現行の他の検出器よりもファクター倍良い結果が得られた。今後、読み出し回路系等の改良を加えることで、さらに1桁以上分解能が良くなり、1立法メートルサイズの検出器を用い、ガスを選定すれば、50MeVでFermiと同等の有効面積が達成できると期待される。
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